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ここで問題なのは、人間社会の消費するエネルギーとして、バイオマスとして消費するのは0.5TWにすぎず、残りの10TWは、ほとんど(95%)が石炭および石油などの化石燃料が消費されていることである。現在の生態系と無関係の化石エネルギーを消費することに弊害があり、CO2による地球環境問題はその現われであると言うこともできよう。生態系が消費し地球内部に閉じ込めたエネルギーを人類が掘り出し、あえて大気に還元していることに原因があるのである。
ここで共生の意味を考えてみる。システム論的に言えば、二つ以上のシステムが関係を持つあり方には、図2−1に示すような3つのレベルが意味がある。これらの各レベルでは、いずれも相互のシステムがお互いを認識し合い、環境をお互いにとって都合の良いように変化させていく。第1のレベルでは、システムは両者の間でエネルギーと物質を交換し合い相互依存関係にある。第2のレベルでは、第1のレベルに加えて情報の交換、すなわちコミュニケーションが新たに加わる。第3のレベルは、経験や心の認識までもが通じ合い、真の意味でのコミュニケーションが成立し、環境の中でシステムが融合した場合である。現在の人類活動と地球生態系との相互関係は、これらの共生関係のレベルにあてはめれば、相互依存の初期的段階と言えなくもない。将来どのレベルまで生態系との共生が成り立つか定かではない。本調査では、人類の産業社会と生態系が少なくとも完全な相互依存を達成するためのエネルギー革新を描き出すことが目標である。そのためには、生体のエネルギー原理を理解することから始める必要がある。

 

 

 

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